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@golaj

名古屋市中区、住宅街の一角にひっそりと佇むラーメン店「麦の星」。その名の通り、麦の香りが星のようにきらめくような、そんな一杯を求めて足を運んだ。

実はこの店との出会いも、ちょっとした奇跡だった。夜の街を歩いていると、ふと視界の端に煌めく光が差し込んだ。まるで暗闇の中に差し込む木漏れ日のように、自然に目を引く外観。数多の電球が優しく灯り、温もりと期待を同時に感じさせる。店先には丁寧に掲げられたメニューがあり、その佇まいからも、ただならぬ中華そばへのこだわりが伝わってくる。

「こんな場所に、こんな店があったなんて…」 まるで星の導きに引き寄せられたような気持ちで、ぼくはその扉を開けたのだった。

店の扉を開けた瞬間、ふわりと広がる小麦の香り。カウンター越しに見える厨房は静かで整然としており、まるで割烹のような空気感が漂っている。中華そばというと、どこか活気と喧騒のイメージがあるけれど、ここにはそれとは異なる、凛とした品格があった。

席に着くと、まず供されたのは、澄んだだし汁。これは「麦の星」ならではの粋な計らいで、食前に胃を整え、味覚を研ぎ澄ませるための一杯だという。口に含むと、昆布や節の旨味がじんわりと広がり、まるで静かな森の中にいるような感覚に包まれた。

今回いただいたのは、特製中華そばの塩と醤油。まずは塩から。透き通るようなスープは、見た目の繊細さに反して、しっかりとした出汁の輪郭を持っていた。鶏の旨味に貝の風味が重なり、そこにほんのりとした塩のエッジが加わる。まるで波打ち際に立って、潮風を感じているような、そんな味わいだった。

そして、特筆すべきは麺。自家製の中細ストレート麺は、まるで絹糸のように滑らかで、噛むたびに小麦の香りがふわりと立ち上る。コシはしっかりとありながらも、スープとの絡みが絶妙で、まさに一体感のある仕上がりだ。

続いて醤油。こちらは一転して、深みと奥行きのある味わい。数種類の醤油をブレンドしているというスープは、まるで熟成された和食の煮物のような落ち着きがあり、口の中でじんわりと広がる旨味が心地よい。塩とはまた違った、包容力のある一杯だった。

トッピングも抜かりない。低温調理されたチャーシューはしっとりと柔らかく、味玉は黄身がとろりと溶け出す絶妙な火入れ。全体のバランスを引き締めている。

…そして、忘れてはならないのが「追いそば醤油(100g)」の存在だ。追加で頼んだこの一皿は、まるで物語の余韻を楽しむエピローグのよう。まずはそのまま一口。しっかりと味がついていて、コクのある醤油の風味が口いっぱいに広がる。まるで、主役級の存在感。けれど、スープにそっと沈めれば、また違った表情を見せてくれる。旨味が重なり合い、まるで星座が繋がって新たな形を描くような、そんな味の広がりが生まれるのだ。

「麦の星」は、ただラーメンを食べる場所ではない。そこには、素材への敬意と、食べ手への思いやりが詰まっている。だし汁から始まり、塩と醤油、それぞれの個性が際立つ中華そばは、まるで一篇の物語のように、静かに、しかし確かに心に残る。

帰り道、ふと空を見上げると、夜空にひときわ輝く星があった。あの一杯も、きっと同じように、誰かの心に小さな光を灯しているのだろう。

【店舗情報】
店名:中華そば 麦の星
住所:〒460-0006 愛知県名古屋市中区葵1丁目22−14 村上ビル 1階
電話番号:052-908-1167
営業時間:月火木金(11:00~16:00 17:30~22:00)土日(11:00~22:00)
定休日:水曜日
アクセス:地下鉄新栄町駅2番出口から徒歩1分
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HP:
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